「キハ185系って、まだ乗れるの?」と検索してたどり着いた方、結論から言います。2026年8月現在も四国と九州の両方で現役です。しかも定期の特急として毎日走っています。ただし乗れる場所はかなり絞られていて、四国では徳島線の特急「剣山」ただ1本、九州では「ゆふ」「九州横断特急」「A列車で行こう」の3系統。この4つを押さえておけば、ほぼ確実に会えます。
1986年に国鉄が最後に世に送り出した特急形気動車で、製造されたのはたった52両。それが40年たった今も、観光列車に化けたり普通列車に混ざったりしながら生き延びている——という、なかなか他に例のない車両です。この記事では「どこで・いくらで・何号車に乗れば会えるのか」を、JR四国・JR九州の公式データをもとに全部並べます。
✅ この記事でわかること
✓ キハ185系がどんな車両で、なぜ扉が2つあるのか
✓ 2026年時点で乗れる列車・区間・料金(徳島〜阿波池田は自由席3,030円)
✓ 九州で主力になった経緯と「ゆふ」「九州横断特急」の乗り方
✓ 観光列車に改造された5本の正体と、いつまで走るのかの現在地
国鉄キハ185系気動車は1986年デビュー|たった52両しか作られなかった最後の特急形

営業運転開始は1986年11月1日。国鉄が消える5か月前の登場
キハ185系が営業運転を始めたのは1986年11月1日。国鉄が分割民営化されてJRになるのが1987年4月1日ですから、そのわずか5か月前のデビューです。製造期間は1986年から1988年で、国鉄時代とJR四国時代にまたがって作られました。
製造両数は52両。新幹線や首都圏の通勤電車が数百両〜数千両単位で作られることを考えると、けた違いに少ない数です。製造を担当したのは日本車輌製造・新潟鐵工所・富士重工業の3社。四国という限られた市場向けに設計された車両なので、量産する必要がそもそもなかったわけですね。
ちなみに「キハ」というのは、ディーゼルエンジンで走る動力付き客車を表す国鉄の形式記号です。「キ」が気動車、「ハ」が普通車を意味します。この記号のルールを知っていると、駅で見かけた車両の性格が一発でわかるようになります。

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国鉄特急形気動車で初のステンレス車体。窓は74cmに拡大
キハ185系の最大の技術的トピックは、国鉄の特急形気動車として初めてステンレス車体を採用したことです。それまでの国鉄特急形は鋼製車体が当たり前で、塗装の塗り替えや腐食対策に手間とお金がかかっていました。ステンレスなら錆びにくく、塗装費用も抑えられ、しかも軽い。民営化後に自力で経営していかなければならない四国の鉄道にとって、これは切実な選択でした。
側面の窓は従来より広い幅74cmに拡大され、外から見ると窓が連続しているように見えるデザインになっています。車内から眺めたときの開放感を優先した設計で、吉野川沿いや豊肥本線の阿蘇の景色を走る今の使われ方に、結果的にぴったりはまっています。
正面は貫通型(前面に扉があるタイプ)。これは見た目のかっこよさより、編成をバラバラにして自由につなぎ替えられることを優先した結果です。この「割り切り」が、後の40年を支えることになります。
キハ185系が履いている台車はDT55(動力台車)とTR240(付随台車)。これは国鉄が開発した最後の台車形式です。車両そのものだけでなく、足回りまで「国鉄最後」の称号を持っている、かなり珍しい存在なんです。
エンジンは250馬力を1両に2基。実は結構パワフル
搭載エンジンは新潟鐵工所製のDMF13HS(250PS/1,900rpm)。キハ185形は1両あたりこれを2基積んでいます。つまり1両で500馬力。中間車のキロハ186形だけは1基搭載でした。
なぜ2基も積んだのか。四国の路線は勾配とカーブの連続で、特に土讃線や徳島線の山間部は平坦とはほど遠い。加えて、2両や3両といった短い編成で走らせることが前提だったため、1両あたりの出力を確保しないと山を登れなかったのです。動力を分散させることで、編成の長さを変えても走行性能が落ちないという狙いもありました。
設計上の最高速度は110km/h。ところが当時の四国の線区最高速度は95km/hで、性能を持て余していました。これは将来の高速化を見込んだ設定で、実際にその後の線路改良で活きることになります。
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番台の見分け方|0番台・1000番台・キロハ186形の3種類
キハ185系は大きく3つの形式に分かれます。キハ185形0番台が26両(定員60名)、キハ185形1000番台が18両(定員64名)、そしてグリーン車と普通車の合造中間車キロハ186形が8両。合計52両という内訳です。
0番台と1000番台の違いは、ざっくり言えばトイレの有無です。0番台はトイレ付き、1000番台はトイレなしでその分座席が4席多い。編成を組むときに「0番台+1000番台」でペアにすれば、2両でトイレ1か所が確保できるという考え方でした。
2026年4月1日現在の配置はJR四国32両・JR九州20両。国鉄が四国向けに作った車両の約4割が、いま九州で働いているという状態です。この経緯は後の見出しで詳しく触れます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 営業運転開始 | 1986年11月1日 |
| 製造両数 | 52両(1986〜1988年製) |
| 車体 | ステンレス(国鉄特急形気動車で初) |
| エンジン | DMF13HS 250PS/1,900rpm(キハ185形は2基) |
| 最高速度 | 110km/h |
| 台車 | DT55/TR240(国鉄最後の台車形式) |
| 2026年4月1日現在の配置 | JR四国32両/JR九州20両 |
特急なのにドアが2つある理由|民営化前夜の「本音」が設計に出ている
結論:最初から普通列車で使うつもりで作られていた
キハ185系を実際に見ると、多くの人が「あれ、特急なのに扉が2つある?」と気づきます。従来の国鉄特急形は乗り降りに時間をかけない前提で客用扉は片側1か所が定番でした。ところがキハ185系は2か所あります。
理由ははっきりしていて、普通列車での使用が当初から考慮されていたからです。特急として役目を終えたあと、あるいは特急運用がない時間帯に、そのまま普通列車として走らせる。扉が1か所しかないと駅での乗り降りに時間がかかり、ダイヤが組めません。だから最初から2か所にしておいた——という、きわめて実利的な設計です。
特急形車両が普通列車に転用されるケースは他にもありますが、設計段階からそれを織り込んでいたのはかなり異例。国鉄末期の切実な事情がそのまま形になっているわけです。
なぜそこまで割り切ったのか|「急行を特急に格上げする」という戦略
キハ185系が企画された背景には、はっきりした経営戦略がありました。老朽化した急行形車両を置き換えると同時に、急行列車そのものを特急へ格上げするという狙いです。
急行を特急にすれば、同じ区間でも特急料金を受け取れます。四国は路線距離が短く、人口も限られている。分割民営化後にJR四国が独立して経営していくには、収入の底上げが不可欠でした。そのために「特急にふさわしい見た目と設備を、できるだけ安く量産する」必要があった。ステンレス車体も、貫通型の前面も、扉2か所も、すべてこの一点に向かっています。
ただし割り切りには代償もあって、編成を自由に組めるようにした結果、6両以上の長い編成を組むと、従来のキハ181系より座席定員が少なくなるという弱点を抱えることになりました。短編成での運用に最適化した車両だからこそ、いま2両編成の特急として生き残っている、とも言えます。
🎯 裏ワザ
「特急形の座席に、特急料金なしで座る」方法が実は残っています。JR四国の予讃線では、キハ185系3100番台が松山〜宇和島の長距離普通列車に充当されています。普通列車なので必要なのは運賃だけ。特急形のクロスシートで数時間、追加料金ゼロで移動できます。ただし2026年5月時点で該当するのは1往復のみ(松山5時51分発の宇和島行き・長浜経由と、宇和島6時10分発の松山行き・内子経由)なので、狙うなら早起き必須です。
3000番台という「もう存在しない番台」の話
キハ185系には3000番台という区分がありました。これはキハ185形0番台を、在来の一般形気動車と連結できるように改造した普通列車仕様で、2000年に2両が改造されています。
ところがこの2両、2006年6月に元の仕様へ戻されて高松運転所へ復帰しました。つまり3000番台は現存しません。ネット上の古い記事や車両図鑑にはいまも3000番台の記載が残っていることがあるので、実車を探しに行く前に注意してください。
一方で3100番台は今も現役です。こちらはトイレなしの1000番台からの改造で、松山運転所に所属。特急仕様に戻された車両もあり、番台を行ったり来たりしているのがこの系列らしいところです。汎用性を優先した設計思想が、40年たっても改造の自由度として効いています。
ステンレス車体が寿命を延ばした|40年走れている本当の理由
同時期の国鉄形車両の多くがすでに姿を消しているなか、キハ185系が2026年になっても現役でいられる理由のひとつがステンレス車体です。鋼製車体は経年で腐食が進み、修繕費がかさんでいずれ廃車の判断につながります。ステンレスはそこが圧倒的に有利でした。
もうひとつは改造しやすさ。貫通型の前面と、扉2か所という素直な構造のおかげで、車内を大胆にいじっても成立してしまう。実際、後述する観光列車たちは車内をほぼ作り替えていますが、ベースはこのキハ185系です。「使い回しが効く」という当初の設計方針が、そのまま延命の理由になったわけですね。
逆に言えば、限界は機器の老朽化です。車体が持っても、エンジンや台車の部品供給が止まれば維持できません。2026年時点で置き換えの話が出てきているのは、まさにここが理由です。
四国で乗れるのは実質「剣山」だけ|徳島〜阿波池田の料金と停車駅10駅

2026年、定期特急の運用は徳島線の1本にまで縮小した
結論から言うと、2026年時点でJR四国に残るキハ185系の定期特急運用は、徳島線の特急「剣山」のみです。かつては「しおかぜ」「南風」「うずしお」「むろと」と、四国じゅうの特急で使われていました。それが2025年3月のダイヤ改正で大幅に縮小し、現在の姿になっています。
背景にあるのは2600系・2700系といった新型気動車の増備です。振り子式や車体傾斜制御を備えた新型は曲線での速度が上がるため、所要時間の短縮につながる。40年選手のキハ185系が主要幹線から退くのは、経営判断としては自然な流れでした。
逆に言えば、徳島線には勾配の厳しい高速走行区間が少なく、2両編成で足りる需要規模だったからこそ、剣山にキハ185系が残ったとも言えます。乗りたい方は、まずここを目指すのが確実です。
| 所在地 | 徳島県徳島市寺島本町西1丁目 |
| 路線 | 徳島線・高徳線・牟岐線 |
| 公式サイト | JR四国 公式サイト |
停車駅は10駅、所要は約1時間20分|下り4本・上り3本の少なさに注意
特急「剣山」の停車駅は徳島・蔵本・石井・鴨島・阿波川島・阿波山川・穴吹・貞光・阿波加茂・阿波池田の10駅。徳島〜阿波池田を約1時間20分で結びます。
ここで一番気をつけたいのが本数です。運転本数は下り4本・上り3本。上下で本数が違う点に注意してください。1〜2時間に1本という感覚ではなく、「1日に数本」の世界です。行きは乗れても帰りの列車がない、という事態が普通に起こります。
実用的なコツとしては、阿波池田駅で土讃線の特急「南風」「しまんと」に接続させる使い方が便利です。徳島から高知方面や岡山方面へ抜けるルートとして剣山を組み込むと、乗り継ぎがきれいにはまります。最新の時刻はJR四国公式サイトの時刻表で確認してください。
徳島〜阿波池田は自由席3,030円|指定席との差はきっちり530円
気になる料金です。徳島〜阿波池田の営業キロは74.0km、片道運賃は大人1,830円・こども910円。
これに特急料金が加わります。JR四国の四国内特急料金(通常期・指定席)は営業キロ100キロまでが1,730円。自由席はここから一律530円引きなので1,200円です。つまり合計は自由席3,030円、指定席3,560円(通常期)。差額はきっちり530円です。
2両編成の列車ですから、自由席を選ぶかどうかは混雑次第。多客期でなければ自由席で座れる可能性は十分あります。逆に、後述するアンパンマンカー連結日は指定席が埋まりやすいので、確実に座りたいなら早めに押さえるのが正解です。料金の根拠はJR四国「きっぷのご利用案内」で確認できます。
| 徳島〜阿波池田(74.0km) | 自由席 | 指定席(通常期) |
|---|---|---|
| 運賃 | 1,830円 | 1,830円 |
| 特急料金 | 1,200円 | 1,730円 |
| 合計 | 3,030円(おすすめ) | 3,560円 |
※ガタンゴトン研究所調べ。JR四国の四国内特急料金表(通常期・指定席100キロまで1,730円/自由席は530円引き)と徳島線の運賃をもとに算出
よくある失敗①「アンパンマンカーがあると思って乗ったら普通の2両だった」
剣山にまつわる最大の勘違いがこれです。剣山には「ゆうゆうアンパンマンカー」が連結される日があるのですが、毎日ではありません。
連結されるのは下り1号・3号と上り4号・6号で、しかも土休日や夏休み・冬休みなどの多客期に限られます。連結される日はアンパンマンカーが2号車(指定席)として組み込まれ、編成が1・2・3号車になります。連結されない日は1号車と3号車だけ、という号車番号の飛び方をします。
お子さん連れで「アンパンマンの列車に乗せてあげよう」と計画している場合、乗る日が連結対象日かどうかを事前に確認してください。平日にふらっと乗ると、ごく普通の国鉄形2両編成が来ます。それはそれで趣がありますが、期待値が違うと悲しいことになります。
🚆 特急「剣山」の号車ガイド(アンパンマンカー連結日)
1号車 自由席・指定席
2号車 ゆうゆうアンパンマンカー(指定席・連結日のみ)
3号車 自由席
海を渡った20両が九州の主力に|1992年の譲渡から始まった第二の人生
1992年、急行を特急に格上げするために20両が九州へ
四国生まれの車両が、なぜ九州で走っているのか。答えは1992年7月のダイヤ改正にあります。
このときJR九州は、急行「由布」と「火の山」を特急に格上げしようとしていました。ところが当時これらの急行に使われていたのはキハ58形・キハ65形という、さらに古い急行形車両。特急に格上げするには車両を用意しなければならない。そこへ、JR四国で2000系の投入により余剰が出始めていたキハ185系がぴったりはまりました。
同年、20両がJR四国からJR九州へ譲渡されます。中古車を買って特急に格上げする、というかなり大胆な手ですが、キハ185系がもともと「急行を特急に格上げするために作られた車両」だったことを考えると、これほど適材適所な移籍もありません。四国でやったことを、そのまま九州でもう一度やったわけです。
グリーン車が普通車になった|キロハ186形→キハ186形の改造
譲渡にあたって、車両にはしっかり手が入りました。客室の腰掛けモケット、床敷物、カーテンが交換され、トイレ・洗面所もリニューアルされています。
いちばん大きな変化を受けたのがキロハ186形です。もともとグリーン車と普通車の合造中間車だったこの形式は、JR九州へ渡った分がすべて全室普通車へ格下げされ、形式もキハ186形0番台に改められました。同時にエンジンをもう1基追加して2機関化されています。
グリーン車をやめて普通車にし、その分エンジンを積んで走りを強化する。九州の路線事情に合わせた、実に合理的な改造です。国鉄形車両が譲渡先で性格を変える例は多いですが、ここまで中身が変わるのは珍しい部類に入ります。
九州横断特急とゆふ|2両編成で3時間超えを走る2つの顔
2026年現在、JR九州のキハ185系が担当する定期特急は2つあります。
ひとつが「九州横断特急」。熊本〜大分・別府を豊肥本線・日豊本線経由で結ぶ列車で、1日3往復。1号車が指定席、2号車が自由席の2両編成です(大分・別府寄りが1号車、熊本寄りが2号車)。2004年3月13日に特急「あそ」を再編する形で運行を開始し、2016年4月の熊本地震で全区間運休、同年7月9日に阿蘇〜別府で部分再開、2020年8月の豊肥本線全線復旧を経て現在の体制になりました。2025年3月のダイヤ改正からは5駅が全列車通過に変更されています。
もうひとつが「ゆふ」。博多〜別府が2往復、博多〜大分が1往復の計3往復です。2021年3月13日の改正で所定3両から2両編成(指定席・自由席が各1両)へ減車されましたが、需要増により現在は4〜5両編成での運転が常態化しています。国鉄形が5両つながって博多駅に入ってくる光景は、いまや貴重です。
熊本〜大分は3時間超え5,540円|「乗ること」が目的になる特急
九州横断特急の料金と所要時間を具体的に見てみましょう。熊本〜大分は運賃3,740円、自由席特急料金1,800円、指定席特急料金2,530円。合計で自由席5,540円、指定席6,270円です。
注目は所要時間で、3時間07分〜3時間24分。特急でこの時間はかなり長い部類です。熊本発は8時25分(11時49分着)、11時51分(15時07分着)、15時23分(18時30分着)の3本。豊肥本線は阿蘇の外輪山を越えるルートで、立野のスイッチバックをはじめ見どころが連続します。
実用的な判断としては、単純に速く移動したいなら新幹線と日豊本線特急を乗り継ぐルートのほうが早いです。九州横断特急は「阿蘇の車窓を3時間かけて楽しむ列車」と割り切ったほうが満足度が高くなります。指定席と自由席の差は730円。3時間立ちっぱなしのリスクを考えると、指定席を押さえておく価値は十分あります。最新の時刻はJR九州の駅別時刻表で確認してください。
| 列車名 | 区間 | 本数 | 編成 |
|---|---|---|---|
| 剣山 | 徳島〜阿波池田 | 下り4本・上り3本 | 2両(連結日は3両) |
| 九州横断特急 | 熊本〜大分・別府 | 3往復 | 2両(1号車指定・2号車自由) |
| ゆふ | 博多〜別府・大分 | 3往復 | 所定2両(実際は4〜5両が常態化) |
| A列車で行こう | 熊本〜三角 | 運転日カレンダー制 | 2両(全車指定席) |
※ガタンゴトン研究所調べ。2026年8月時点の各社公表情報をもとに整理
観光列車に化けた元特急たち|千年ものがたりからトロッコまで5本

四国まんなか千年ものがたり|土讃線の渓谷を走る3両編成
キハ185系がいちばん華やかに生まれ変わったのが観光列車です。まず「四国まんなか千年ものがたり」。2017年4月1日に運行を開始した土讃線の観光列車で、多度津〜大歩危を走ります。
編成は3両。内訳が面白くて、0番台から改造した2両に、3100番台から再改造した1両を加えた構成です。一度普通列車用に改造された車両が、さらに観光列車へと二度目の改造を受けている。前の見出しで触れた「改造しやすさ」が、ここでも効いています。
走るのは吉野川の渓谷沿い。大歩危・小歩危の景勝地を、幅74cmの大きな窓から眺める設計になっています。もともと国鉄が景色のために作った窓ではないのに、観光列車として完璧にはまってしまったという、ちょっと出来すぎた話です。
伊予灘ものがたり(2代目)|2両から3両へ、そして特急に格上げ
「伊予灘ものがたり」の2代目は、2022年4月2日に運行を開始しました。初代はキハ47形2両編成でしたが、2代目はキハ185系ベースの3両編成となり、同時に特急に格上げされています。
座席数は1号車27名・2号車23名・3号車8名。3号車「陽華の章(はるかのしょう)」には、2名から8名まで利用できる貸切個室「Fiore Suite」が設置されています。外装は茜色と黄金色を基調としたメタリック塗装で、伊予灘の夕景をモチーフにしたシンボルマークが入ります。
合計58席という小ささが、この列車の性格を物語っています。乗ること自体が目的の列車なので、予約は早めが鉄則。特に3号車の個室は席数が8名分しかありません。
藍よしのがわトロッコ|キハ185-20が引っ張る徳島線のトロッコ
徳島線には「藍よしのがわトロッコ」が走っています。通常はキクハ32-501とキハ185-20の2両編成。トロッコ車両を、キハ185系1両が受け持つスタイルです。
面白いのが、2026年5月3日には車両の都合により国鉄色のキハ185系2両を増結した4両編成で運転されたこと。トロッコ列車に国鉄色の特急形が2両ぶら下がるという、狙ってもなかなか実現しない編成が生まれました。こういうイレギュラーが起きるのも、汎用性の高いキハ185系ならではです。
運転日は限られるので、狙うならJR四国公式サイトの観光列車ページで運転日カレンダーを確認してください。徳島線は剣山と同じ路線なので、剣山とトロッコをセットで組み込む行程も作れます。
A列車で行こう|バーカウンター付き、熊本〜三角を2,650円で
九州側の観光列車が「A列車で行こう」。熊本〜三角の三角線を走る2両編成の全車指定席で、種車はキハ185-4とキハ185-1012です。
1号車にはバーカウンター「A-TRAIN BAR」とソファーのフリースペース、2号車には3〜4名用のボックスシート、ベンチシート、キッズチェアが用意されています。所要時間は熊本〜三角で約1時間9分(1号車は10時21分発→11時30分着)。
料金は熊本〜三角で大人1名2,650円(普通運賃+指定席特急料金)。観光列車としては驚くほど手が届く価格です。きっぷは1か月前の10時00分から発売で、JR九州Web会員(登録無料)ならネット予約が可能。ただしボックスシートはみどりの窓口での取扱いなので、家族やグループで確実にボックスを取りたいなら窓口へ。詳細はJR九州「特急A列車で行こう」公式ページで確認できます。
土讃線 多度津〜大歩危/3両
予讃線/3両・全58席
三角線 熊本〜三角/2,650円
乗る前によくやる失敗3つ|号車と料金でうっかり損しないために
よくある失敗②「2号車が自由席だと思ったら、路線によって逆だった」
2両編成の特急は号車の並びが単純なぶん、思い込みで乗ってしまう事故が起きます。
九州横断特急の場合、1号車が指定席、2号車が自由席。しかも大分・別府寄りが1号車、熊本寄りが2号車という向きです。つまり熊本駅で先頭に見える車両が自由席になります。「特急は前寄りが自由席」という一般的な感覚とは向きが変わる場面があるので、ホームの号車案内をひと目で確認する習慣をつけてください。
「ゆふ」も所定は2両編成で指定席・自由席が各1両ですが、実際は4〜5両編成での運転が常態化しています。編成が伸びた日は号車の並びが所定と変わることがあるので、なおさら号車案内が頼りです。乗車位置の目安がわからないときは、駅係員に「自由席は何号車ですか」とひと言聞くのが最短で確実です。
⚠️ 注意点
2両編成の特急は座席の絶対数が少ないのが最大のリスクです。九州横断特急は自由席が1両のみ、剣山も基本2両。観光シーズンや連休は自由席が立ち席になることが十分ありえます。3時間超えの九州横断特急で立ちっぱなしはかなりつらいので、長距離利用なら指定席を検討してください。
よくある失敗③「閑散期のつもりが最繁忙期で、指定席が400円高かった」
JR四国の指定席特急料金には季節による変動があります。最繁忙期は400円増し、繁忙期は200円増し、閑散期は200円引き。自由席は通年同額です。
2026年の最繁忙期は5月1〜6日、8月7〜8日、8月15〜16日、9月18〜23日、12月29〜30日。ゴールデンウィークやお盆の中日がピンポイントで指定されています。「連休だから高いんだろうな」ではなく、日付単位で切り替わる点に注意してください。
裏を返せば、閑散期に当たれば指定席が200円引きになります。自由席との差額は通常530円ですが、閑散期なら330円差。2両編成で混雑が読めない列車を確実に座って乗るなら、閑散期の指定席はかなり割安な選択です。
指定席と自由席の差は「530円」で覚えておく
JR四国の四国内特急料金は、自由席=通常期の指定席料金から530円引きという単純なルールです。距離帯ごとの指定席料金を覚えておけば、自由席はその場で暗算できます。
参考までに通常期・指定席の料金表は、50キロまで1,290円/100キロまで1,730円/150キロまで2,390円/200キロまで2,730円/300キロまで2,950円/400キロまで3,170円/600キロまで3,490円/601キロ以上3,830円。剣山の徳島〜阿波池田は74.0kmなので「100キロまで」の1,730円が適用され、自由席は1,200円になります。
40年目を迎えたキハ185系はいつまで走る?置き換えの現在地
2026年1月、2両がまた九州へ渡った
置き換えの話をする前に、直近の大きな動きを押さえておきましょう。2026年1月14〜15日、JR四国のキハ185-1016・1017の2両が高松から西小倉へ甲種輸送されました。JR九州への譲渡が目的です。
この2両は運転台設備とワイパーが撤去されて中間車化されましたが、先頭形状はそのまま残されています。運転台がないのに顔だけある、という独特の姿になったわけです。1992年の20両譲渡から30年以上を経て、ふたたび四国から九州へ車両が渡ったことになります。
この動きが示しているのは、九州側ではむしろ需要が伸びているという現実です。インバウンドを含む観光需要で九州横断特急や「ゆふ」の混雑が指摘されており、増結用の車両が必要になった。四国で余った車両を九州が引き取る構図は、1992年とまったく同じです。
四国側の焦点は「剣山」の行方
一方、四国側の状況は厳しめです。2026年3月のJR四国ダイヤ改正をめぐっては、キハ185系の老朽化を理由に、利用の少ない徳島線特急「剣山」を廃止する可能性が予測されていました。
ただしJR四国から全面引退の時期は公式に示されていません。剣山を存続させる場合、他の特急の減便で余った新型車両を回す、という選択肢もあり得ます。現時点で確定的なことは言えないというのが正直なところです。
確実なのは、定期特急としてのキハ185系は縮小方向にあるということ。四国で定期特急として乗りたいなら、先延ばしにしない判断が現実的です。国鉄形車両は「まだ大丈夫」と思っているうちに引退が発表されるのが常です。同じ国鉄形特急でも、485系のようにすでに形式消滅してしまった例があります。

「485系って、まだどこかで乗れるんですか?」——検索でここにたどり着いた人の多くが、この疑問を抱えています。結論から言うと、485系に乗れる列車は1本も残って…
キハ185系の今後については、JR四国・JR九州とも引退時期を公式に発表していません。この記事の「今後の見通し」は鉄道メディア等による観測を整理したもので、確定情報ではありません。ダイヤ改正の内容は各社のニュースリリースで正式発表されるので、乗車計画を立てる際は必ず公式発表を確認してください。
観光・イベント分野なら、まだ長く生き残る可能性が高い
定期特急からの撤退が進む一方で、観光・イベント分野では長く生き残る可能性が指摘されています。理由は単純で、観光列車として大改造した車両は、そう簡単に置き換えられないからです。
四国まんなか千年ものがたり、伊予灘ものがたり、藍よしのがわトロッコ、そして九州のA列車で行こう。これらはいずれもキハ185系をベースに車内を作り替えた車両で、新型に置き換えるとなればゼロから設計し直す必要があります。しかも観光列車は運転日が限られるため走行距離が伸びにくく、機器の傷み方も定期運用の車両とは違います。
つまり、「毎日走る特急としてのキハ185系」と「観光列車としてのキハ185系」では、残り時間の長さが違うということ。定期特急の剣山は急いだほうがいいけれど、観光列車は比較的余裕がある。この2つを分けて考えると、乗り鉄の計画が立てやすくなります。
まとめ|四国と九州、2つの島で走り続ける国鉄最後の特急形
国鉄が最後に送り出した特急形気動車、キハ185系。1986年11月1日の営業運転開始からまもなく40年になりますが、2026年8月現在も四国と九州の両方で毎日走り続けています。国鉄特急形として初めてステンレス車体を採用し、扉を2か所にして普通列車への転用まで織り込んだ「割り切りの設計」が、結果として異例の長寿を支えました。
会いに行くなら、まず四国は徳島線の特急「剣山」。徳島〜阿波池田74.0kmを約1時間20分で結び、自由席なら3,030円、指定席なら3,560円(通常期)です。ただし本数は下り4本・上り3本しかないので、帰りの列車まで含めた計画が必須。土休日や長期休みには「ゆうゆうアンパンマンカー」が2号車として連結される日もあります。
九州なら「ゆふ」と「九州横断特急」が各3往復。特に九州横断特急は熊本〜大分を3時間超えで走り、自由席5,540円・指定席6,270円。阿蘇の車窓を時間をかけて楽しむ列車です。ここに、全車指定席で2,650円の「A列車で行こう」(熊本〜三角)を加えれば、九州側は3パターンの乗り方が選べます。
四国の観光列車では、四国まんなか千年ものがたり(多度津〜大歩危)、伊予灘ものがたり2代目(全58席、3号車に貸切個室Fiore Suite)、藍よしのがわトロッコの3本がキハ185系ベース。定期特急が縮小していく一方で、観光列車としては当分残ると見られています。
次にやることはシンプルです。まずはJR四国とJR九州の公式サイトで、剣山と九州横断特急の時刻表を開いて、行きと帰りの組み合わせが成立するか確かめてみてください。どちらも1日3〜4本の世界なので、時刻表を見た瞬間に旅程の骨格が決まります。剣山なら阿波池田で土讃線の特急に接続させると行動範囲が一気に広がりますし、九州横断特急なら大分・別府での宿泊とセットにするのが現実的です。国鉄形の特急に会えるチャンスは、確実に少なくなっています。
※料金・運転本数・停車駅は変更される場合があります。最新情報は各鉄道会社の公式サイトでご確認ください。

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