717系とは急行形を改造した全46両の交流電車!仙台と九州の違い・引退年を全解説

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時刻表や車両図鑑で「717系」という形式を見かけて、これって何だろう?と検索した方が多いはずです。新幹線でもなければ特急でもない、ちょっと地味な名前。調べても情報が断片的で、仙台の話と九州の話が混ざっていて余計に分からなくなる——そんな形式です。

先に結論をお伝えします。717系は、1986年に国鉄が「急行形電車の走行機器を再利用して、新しい車体をかぶせた」交流専用の近郊形電車です。全部で46両しか存在せず、仙台地区と九州地区でまったく違う姿をしていました。そして2014年9月18日までに全車が廃車になり、保存車も1両も残っていません。つまり、いま乗ることも見ることもできない形式です。

それでも717系を知る価値はあります。国鉄がお金のない時代にどう車両をやりくりしたのか、その答えがこの形式に詰まっているからです。この記事では、46両の内訳、仙台と九州でどう違ったのか、なぜ保存車がゼロなのか、そして717系の「兄弟」にあたる413系ならいまも土休日を中心に乗れるという話まで、公式情報で確認できた数字だけを並べて整理します。

✅ この記事でわかること

✓ 717系の正体と、なぜ「改造で生まれた」のかという国鉄側の事情

✓ 0番台・100番台・200番台・900番台、全46両の内訳と見分け方

✓ 仙台と九州、それぞれの引退日と置き換えた新形式

✓ 保存車ゼロの717系の代わりに、いま乗れる・見られる国鉄形

目次

717系とは?急行形の中身に新品の車体をかぶせた交流電車

717系とは?急行形の中身に新品の車体をかぶせた交流電車の解説画像

正体は「475系などの足回り+新しい車体」のニコイチ電車

717系を一言でいうと、急行形電車の走行機器を再利用して、近郊形の車体を新しく作って載せ替えた電車です。登場は1986年、改造は1995年まで続きました。種車になったのは451系・453系・475系・457系といった、1960年代に造られた交流直流両用の急行形電車たちです。

なぜこんな作り方をしたのか。急行形は台車・モーター・変圧器といった走行機器がまだ使えるのに、車体だけが先に傷んでいました。しかも急行形はデッキ付きの2扉で、通勤通学の短距離利用には乗り降りが遅い。そこで機器は生かし、車体だけ近郊形として新造したわけです。

結果として717系は、車体は1980年代生まれなのに、モーターは1960年代生まれという不思議な電車になりました。主電動機はMT54形(定格出力120kW)、歯車比は80:19(4.21)。どちらも国鉄の急行形でおなじみの組み合わせです。

音の面白さもここにありました。見た目は当時の新型に近いのに、走り出すと吊り掛けではないものの急行形そのものの唸りが響く。写真だけ見て「新しい車両」と思って乗ると、走行音のギャップに驚く、というのが717系の定番の楽しみ方でした。

🚃 鉄道トリビア
717系の車体は、417系・713系と同じ設計基準で造られました。床面高さも713系と同じ1,200mm。つまり「713系の交流専用・改造版」と考えると、外観の印象がすんなり腑に落ちます。

なぜ新車を造らなかったのか|国鉄末期の台所事情

答えはシンプルで、新車を大量に造る余裕がなかったからです。717系が登場した1986年は、国鉄が分割民営化される直前の年。翌1987年4月にJR各社が発足しています。新形式を一から起こすより、手持ちの急行形から機器を抜いて車体を新造したほうが、1両あたりの費用を抑えられました。

もう一つの事情が、輸送の中身の変化です。1980年代には長距離急行が特急や高速バスに置き換わり、交流電化区間の急行形は「余っているのに使い道がない」状態になっていました。一方で地方都市圏の普通列車には、扉が広く乗り降りしやすい車両が足りない。余った急行形を近郊形に作り替えるのは、この需給のズレを埋める現実的な解でした。

同じ発想で生まれた形式はほかにもあります。1984年に営業を始めた715系は、寝台特急形の581系・583系を近郊形に改造したもの。北陸向けの413系も717系と同じ1986年の登場で、こちらは交流直流両用として計31両が松任工場で改造されました。

調べるときのコツとして、717系・715系・413系・419系はすべて「国鉄末期の改造近郊形」というひとつのグループで語られます。この4形式をセットで覚えておくと、車両図鑑を読むときに系統が一気につながります。

「交流専用」ってどういうこと?直流・交直流との違い

717系は交流電化区間でしか走れない電車です。日本の電化方式は直流1500Vと交流に分かれていて、東北・北陸・九州の多くと北海道が交流、首都圏・中京・関西の在来線は直流という住み分けになっています。交流専用車は変圧器と整流器を積む代わりに直流区間用の機器を省いており、直流区間に入ると走れません。

これが717系の運用範囲を決めました。仙台地区の東北本線・常磐線、九州の鹿児島本線・日豊本線。いずれも交流電化区間で、直流区間へ乗り入れる運用は組まれていません。種車の急行形は交流直流両用でしたが、改造の際に直流用の機器を降ろし、交流専用に整理されています。

ちなみに兄弟形式の413系は交直流のまま残されました。北陸本線は米原方が直流、糸魚川方が交流で、途中に交直切替のデッドセクションがあるためです。同じ1986年生まれでも、走る場所によって中身の設計が変わったわけです。

この違いは乗る側にも関係します。交直流車は車内の照明が切替のとき一瞬消えることがありますが、交流専用の717系にはその瞬間がありません。国鉄形に乗るときは、床下から聞こえる変圧器の唸りと、デッドセクションの有無をセットで意識すると、その車両がどの方式かを体感できます。

クモハ717・クハ716…形式名を読めば中身がわかる

717系の車両には、クモハ717形・モハ716形・クハ716形という名前が付いていました。カタカナの部分が車両の役割を表していて、「ク」は運転台付き、「モ」はモーター付き、「ハ」は普通車を意味します。つまりクモハは運転台とモーターの両方を持つ車両です。

この読み方が分かると、編成の組み方まで見えてきます。仙台の717系はクモハ717形+モハ716形+クハ716形の3両編成。前がモーター付きの運転台車、真ん中がモーターのみ、後ろが運転台だけの付随車という構成です。一方、九州の717系はクモハ717形+クモハ716形。両方がモーター付きの運転台車という、近郊形としては珍しい組み方でした。

数字にも意味があります。同じ「716」でもモハ716形とクハ716形が併存するのは、形式番号を系列内で使い回すルールがあるためです。慣れるまでは紛らわしいのですが、カタカナ部分を先に読む癖をつけると混乱しません。

車両基地の公開イベントや保存車を見に行くとき、side面の車体に書かれた形式標記を撮っておくと、あとで資料と照合できます。国鉄形は同じ顔でも中身が違うことが多いので、形式標記こそが一番確実な手がかりです。

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番台で中身が別物|0・100・200・900の見分け方

0番台と100番台|仙台の3両編成、合わせて30両

仙台地区に配置されたのが0番台と100番台です。0番台の種車は451系、100番台の種車は453系。どちらもクモハ717形+モハ716形+クハ716形の3両編成で、合計30両(3両編成×10本)が改造されました。改造を担当したのは郡山工場・土崎工場・小倉工場です。

0番台と100番台の違いは、種車のモーター出力に由来します。451系と453系はもともと出力の異なる急行形で、その差が改造後の形式区分に残りました。外から見た車体は同じなので、番台を見分けるには車体の形式標記を読むのが確実です。

配置先は仙台運転所(現・仙台車両センター)。走ったのは東北本線と、仙台地区の常磐線です。3両編成という手ごろな長さで、日中の普通列車や区間運転にちょうど良い規模でした。

写真を探すときのコツとして、仙台地区の717系は同時期の455系・457系と混用されていました。同じホームに似た顔が並ぶので、資料として使うなら編成両数(3両か)と扉の形(両開き2扉か)で判別すると間違えません。

200番台|九州の2両編成、モーター車が2両という珍しさ

九州向けが200番台です。種車は475系で、クモハ717形+クモハ716形の2両編成、計14両(2両編成×7本)が小倉工場と鹿児島車両所で改造されました。走ったのは鹿児島本線と日豊本線です。

特徴は、2両編成の両方がモーター付きの運転台車だという点。仙台の3両編成や北陸の413系が「モーター車+モーター車+付随車」なのに対し、九州は付随車を持たない構成でした。種車の475系が電動車ユニットを組んでいた都合で、こういう割り切った編成になっています。

結果として200番台は、2両という短い編成のわりに出力に余裕がありました。日豊本線には勾配区間が多く、短編成でも登坂性能が必要だったという事情も重なります。ローカル運用に投入された車両としては、加速に不足のない部類でした。

見分けるポイントは前面から数えた車両数です。九州で2両の国鉄形交流電車が来たら200番台、3両なら475系などの急行形——という具合に、両数で当たりを付けられました。

900番台|1本しか存在しなかった3扉の異端児

717系で最も個性的だったのが900番台です。457系の電動車ユニット(クモハ457-14・モハ456-14)を改造した2両編成1本のみで、落成日は1995年3月29日。717系のなかで最後に生まれた車両でした。

何が異端だったかというと、この編成だけが3扉だったことです。種車の車体をそのまま使い、中央に1,300mm幅の両開き扉を新たに設けたため、前後は種車の片開き扉、中央だけ両開きという変則的な姿になりました。0・100・200番台が新造車体の両開き2扉なのとは、生い立ちからして違います。

投入の理由は乗降時間の短縮でした。九州の交流電化区間ではラッシュ時の遅れが課題になっており、扉を増やして客の流れを速くする狙いがあったとされています。1本だけの試験的な存在で、量産には至りませんでした。

資料を漁るときの目印は、運転台上の箱形ベンチレータです。900番台は冷房装置を集中式に交換しながらもこの部品が残り、種車の面影を伝えていました。写真で「3扉なのに急行形の顔」に見えたら、それが900番台です。

番台 種車 編成・両数 投入線区
0番台 451系 3両編成/0・100番台合わせて30両 東北本線・常磐線(仙台地区)
100番台 453系 3両編成×10本(0番台と合計) 東北本線・常磐線(仙台地区)
200番台 475系 2両編成×7本=14両 鹿児島本線・日豊本線
900番台 457系 2両編成×1本=2両(3扉) 鹿児島本線・日豊本線

💡 ヒント

ガタンゴトン研究所調べで全番台を足すと、30両+14両+2両=46両。717系はこの46両で打ち止めでした。同じ「717系」でも仙台と九州では編成両数も扉の数も違うため、資料を読むときは必ず番台とセットで確認するのが安全です。

仙台で走った717系|東北本線と常磐線を支えた20年

仙台で走った717系|東北本線と常磐線を支えた20年の解説画像

どこを走っていたのか|仙台運転所に集まった10編成

仙台地区の717系は、仙台運転所(現・仙台車両センター)に配置され、東北本線と仙台地区の常磐線で使われました。3両編成×10本という規模は、当時の仙台圏の普通列車をまかなうには手ごろな数です。

背景には、仙台圏の輸送量の伸びがあります。1980年代の仙台は都市圏が広がり、近郊区間の普通列車の本数を増やす必要が出ていました。デッキ付きの急行形をそのまま普通列車に使うと乗り降りに時間がかかり、停車時間が延びてダイヤに響く。両開き2扉の近郊形に改造する意味は、まさにここにありました。

定員はクモハ717形が118名(座席65名)、モハ716形が132名(座席72名)、クハ716形が116名(座席65名)。3両で360名以上を受け持てる計算で、日中の普通列車には十分な容量でした。

撮影の狙い目としてよく知られていたのが、455系・457系と共通で使われる時間帯です。同じ運用に別形式が入るため、狙った日に717系が来るとは限りませんでした。運用情報を確認してから出かけるのが基本、という点は今の国鉄形撮影と変わりません。

セミクロスシートとステップ|乗り心地は「近郊形の顔をした急行形」

車内はセミクロスシートで、扉は1,300mm幅の両開きが片側2か所。床面高さは1,200mmで、ホームが低い区間に合わせて出入口にステップが付いていました。今の低床車に慣れた目で見ると、1段上がって乗り込む懐かしい構造です。

この床の高さは種車の急行形から受け継いだものです。急行形は長距離走行を前提に床下機器を大きく取っており、床面を下げられません。改造で車体を新造しても、台枠から下は種車のままなので、床の高さだけは変えられなかったわけです。

乗り比べると分かるのは、走りの感触が近郊形離れしていた点。MT54形のモーターは急行形と同じで、最高運転速度は110km/h。編成出力は3両編成時で960kWあり、駅間の長い東北本線では余裕のある加速を見せました。

ステップ付き車両に乗るときの実用的なコツもありました。ホームと床の間に段差があるため、大きな荷物やベビーカーは扉付近で一度止まりがちです。混雑時は扉から一歩奥に進んでから荷物を置くと、後続の乗客の流れが止まりません。これは今も残るステップ付き車両で通用する話です。

2007年11月10日で定期運用を終了、E721系にバトンタッチ

仙台地区の717系は、2007年11月10日に定期運用を終えました。そして2008年までに全車が廃車されています。20年余りの活躍でした。

置き換えたのはE721系です。E721系は2006年11月にデビューし、仙台近郊で使われていた455系・457系・417系・717系の置き換え用として投入されました。2007年10月までに東北本線・常磐線・仙山線の旧型車を置き換えており、717系の定期運用終了はその総仕上げにあたります。

E721系の最大の変化はバリアフリーです。客室の床面を地方線区の低いホームに合わせて低床化し、出入口のステップをなくしました。717系が抱えていた「1段上がる」という不便が、ここで構造的に解消されたことになります。

ちなみにE721系にはその後1000番台が登場し、719系の取替用として2016年11月から営業投入され、2017年までに719系を置き換えています。仙台地区で国鉄形の交流電車を探すなら、717系だけでなく719系もすでに現役を退いていると理解しておくと、無駄足を防げます。

⚠️ 失敗パターン①:717系と719系を取り違える
「717系を撮りに仙台へ」という計画で失敗しがちなのが、719系との混同です。名前が1文字違いのうえ、どちらも仙台地区の交流電車。717系は2008年までに、719系も2017年までに置き換えられており、どちらも仙台地区の定期運用にはいません。現地で待っても来ないので、資料や展示を目当てに動くほうが確実です。

九州の717系|2両とも電動車という割り切った編成

クモハ+クモハの意味|短くても力のある2両

九州の717系は、クモハ717形+クモハ716形の2両編成でした。2両とも運転台とモーターを持つ構成で、付随車がありません。これは種車の475系が電動車ユニットを組んでいたためで、機器を無駄なく使うにはこの形が合理的でした。

ローカル運用で2両というのは短い部類ですが、モーター車の比率が高いぶん出力には余裕がありました。日豊本線や鹿児島本線南部には勾配区間があり、短編成でも登坂性能が求められます。急行形の走行機器をそのまま使った717系は、この点で相性が良かったわけです。

主電動機はMT54形(定格出力120kW)、歯車比は80:19(4.21)で仙台の車両と共通。最高運転速度も110km/hです。番台が違っても足回りが同じというのは、種車の系列が近いからこそでした。

九州で国鉄形を見分けるコツは、両数と扉の位置でした。2両で両開き2扉なら717系200番台、3両でデッキ付きなら475系などの急行形。ホームの端から編成を眺めるだけで、おおよその判別ができました。

大分から鹿児島へ|運用範囲が縮んでいった20年

九州の717系は、登場時は大分電車区と鹿児島に配置され、日豊本線の杵築以南を中心に運用されました。その後2003年以降は鹿児島に集約され、2009年までに運用範囲が縮小しています。活躍の場が南へ、そして狭くなっていった形です。

縮小の理由は新形式の増備でした。JR九州は811系・813系・815系・817系と、交流専用の新型近郊形を次々に投入していきます。ステップのない車両やワンマン運転対応の車両が増えるほど、改造車である717系の出番は減りました。

決定打が2012年です。817系1000番台が鹿児島車両センターに転入し、Hk201・Hk202・Hk205・Hk207編成が順次運用を離脱しました。廃車も編成ごとに進み、Hk901編成とHk206編成は2009年、Hk205・Hk207編成は2013年、Hk204編成は2014年に廃車されています。

この経緯を知っていると、九州の717系の写真を見るときに撮影年の見当が付きます。大分側で撮られた写真なら2003年より前、鹿児島中央から国分あたりなら末期——という具合に、写っている場所が年代の手がかりになります。

2013年3月に定期運用終了、2014年9月18日で全車廃車

九州の717系は、2013年3月のダイヤ改正で定期運用を終えました。廃車が完了したのは2014年9月18日です。仙台地区が2008年までに全廃されていたので、717系という形式そのものは、この日に消滅したことになります。

興味深いのは、仙台の717系より九州の717系のほうが6年ほど長く生き残った点です。仙台には2006年からE721系という新形式が集中投入されたのに対し、九州では新型の投入が路線ごとに段階的だったため、置き換えのスピードに差が出ました。

結果として、717系を撮った・乗ったという記録は九州側に多く残っています。2008年以降に撮影された717系の写真は、すべて九州の車両ということになります。

資料を探す実用的なコツは、編成番号で絞ることです。Hkから始まる編成番号は鹿児島の所属を示し、末期の記録に多く登場します。形式名だけで検索するより、編成番号を添えたほうが目当ての年代の写真にたどり着けます。

🔵 仙台の717系

3両編成×10本=30両。東北本線・常磐線で活躍し、2007年11月10日に定期運用終了、2008年までに全廃。置き換えはE721系。

🟠 九州の717系

2両編成×7本=14両+900番台2両。鹿児島本線・日豊本線で活躍し、2013年3月に定期運用終了、2014年9月18日までに全廃。

🎯 意外と知られていない話

「改造車は早く消える」と思われがちですが、717系は実は逆でした。1986年生まれの車体に1960年代の機器という組み合わせで、九州では28年近く走り続けています。機器を使い切るという国鉄末期の発想は、結果として長寿命につながりました。

数字で読む717系のスペック|110km/hとMT54形の組み合わせ

最高速度110km/h・MT54形120kW・歯車比80:19

717系の走行性能を決めていたのは、種車から受け継いだ機器です。最高運転速度は110km/h、主電動機はMT54形(定格出力120kW)、歯車比は80:19(4.21)。編成出力は3両編成時で960kWでした。

この歯車比は、高速域を伸ばす方向に振った設定です。急行形として長距離を走ることを前提にした数値なので、近郊形に改造されても駅間の長い区間では持ち味が生きました。逆に停車駅の多い都市部では、加速の立ち上がりで後の新形式に及びません。

比較すると分かりやすいのが、置き換えたE721系です。E721系は低床化とバリアフリーを軸に設計された新世代の車両で、駅間の短い区間での加減速性能や乗降のしやすさが717系とは別次元でした。717系が退いた理由は、性能の限界というより設計思想の世代交代です。

スペックを見るときのコツは、最高速度だけを比べないこと。停車が多い線区では、加速度と扉の数のほうが所要時間に効きます。717系が2扉の急行形から両開き2扉の近郊形へ改造された理由も、まさにその点にありました。

車体は1,300mm幅の両開き2扉、床面は1,200mm

車体側の数字も押さえておきましょう。客用扉は1,300mm幅の両開きが片側2か所、座席はセミクロスシート、床面高さは1,200mmです。車体の設計基準は417系・713系と同じで、この3形式は外観の印象がよく似ています。

1,300mm幅という寸法は、当時の近郊形としては標準的です。急行形の片開き扉から両開きに変わったことで、乗降にかかる時間は短くなりました。停車時間が詰められれば、ダイヤ全体に余裕が生まれます。

一方で床面1,200mmという高さは、種車の台枠を使う以上どうにもなりませんでした。ホームが低い駅ではステップを1段上がる必要があり、荷物を持った乗客や高齢の利用者には負担が残ります。この点が最後まで717系の弱点でした。

写真から番台を見分けるときは、扉の形を見るのが早道です。両開き2扉なら0・100・200番台、前後が片開きで中央だけ両開きの3扉なら900番台。1本しかなかった900番台は、扉の形だけで即座に判別できます。

定員は3両で360名超|数字で見る輸送力

定員はクモハ717形が118名(座席65名)、モハ716形が132名(座席72名)、クハ716形が116名(座席65名)です。仙台地区の3両編成なら合計366名で、座席は200名分あった計算になります。

この座席比率の高さは、種車がクロスシート主体の急行形だったことと無関係ではありません。改造後もセミクロスシートを採用したため、通勤形のようなロングシート主体の車両に比べて座れる確率が高く、40分から1時間程度の乗車には向いていました。

九州の2両編成の場合、単純計算で座席は130名分ほど。両数が少ないぶん、朝夕は立ち客が出やすい編成でした。短編成のローカル運用では、この座席数が乗り心地を大きく左右します。

いま同じ視点で車両を選ぶなら、セミクロスシート車が来る時間帯を狙うのが実用的です。ロングシートとセミクロスが混在する路線では、運用表を見て車種を選ぶだけで、長距離乗車の快適さが変わります。

🚆 717系スペック早見

最高運転速度 110km/h

主電動機 MT54形(定格出力120kW)/歯車比80:19(4.21)

車体 1,300mm幅の両開き扉・片側2か所/床面高さ1,200mm/セミクロスシート

保存車ゼロ|717系が1両も残らなかった理由

なぜ1両も残らなかったのか

717系の保存車は1両もありません。全46両が廃車・解体されており、静態保存された車両も現存しない、というのが結論です。国鉄形としては珍しく、記録が写真と資料だけに残る形式になりました。

理由の一つは、717系が「改造車」だったことです。保存の対象になりやすいのは、初号機・記念すべき新形式・特徴的なデザインを持つ車両。717系は急行形の機器流用で生まれた実用本位の車両で、形式としての知名度も高くありませんでした。

もう一つは廃車時期の分散です。仙台の30両は2008年までに、九州の16両は2014年9月18日までにと、まとまった数が一斉に引退したわけではありません。「最後の1本を残そう」という機運が生まれにくい消え方でした。

だからこそ、いま717系を知るには写真と資料が頼りになります。形式標記・編成番号・撮影年月がそろった記録は資料価値が高く、当時の写真を探すときも、この3点が明記されたものを優先すると信頼できる情報にたどり着けます。

九州鉄道記念館で会える「近縁の国鉄形」

717系そのものは残っていませんが、同じ発想で生まれた改造近郊形の面影に会える場所があります。福岡県北九州市の門司港レトロ地区にある九州鉄道記念館です。ここにはクハネ581-8(1968年日立製作所製)が展示され、車内も見学できます。

この車両が717系の話とつながるのは、経歴があるからです。クハネ581-8は近郊形に改造されて715系のクハ715-1となり、1998年の廃車後はJR九州小倉工場で保管され、2000年の小倉工場祭りに向けて修復されました。2003年の記念館開館時に移設され、いまは581系時代の外観に復元されています。「急行形や特急形を近郊形に作り替えた時代」を体感できる、数少ない実物です。

入館料は2026年4月1日から大人500円、中学生以下250円(4歳未満は無料)。屋外の車両展示場には九州ゆかりの車両が並び、屋内の本館では九州の鉄道史をたどれます。詳しい案内は九州鉄道記念館の公式サイトで確認できます。

訪問のコツは、門司港駅から徒歩圏という立地を生かすことです。門司港レトロ地区の散策と組み合わせれば半日で回れます。車両展示場は屋外なので、夏場は日差しの弱い時間帯、雨の日は本館中心と、天気で回り方を変えると快適です。

📍 九州鉄道記念館
住所 〒801-0833 福岡県北九州市門司区清滝2丁目3番29号
電話番号 093-322-1006
営業時間 9:00〜17:00(入館は16:30まで)
定休日 不定休(10日間/年)
アクセス JR門司港駅より徒歩7分
駐車場 専用駐車場なし(近隣の市営駐車場・海峡ドラマシップ駐車場等を利用)
公式サイト 公式サイト
⚠️ 失敗パターン②:休館日に当たって門前払い
九州鉄道記念館は不定休で、年10日間ほどメンテナンス休館があります。曜日で決まっていないため「月曜は休みだろう」といった思い込みが通用しません。門司港まで来て閉まっていた、という事態を避けるには、出発前に公式サイトの休館日案内を見る一手間が要ります。入館料も2026年4月1日から改定されているので、古い記事の金額で財布を用意しないよう注意してください。

715系と717系はどう違う?改造近郊形の兄弟を整理する

混同されやすいのが715系です。違いは種車で、715系は寝台特急形の581系・583系からの改造、717系は急行形の451系・453系・475系などからの改造です。生まれが「寝台特急」か「急行」かで、車内も車体も別物になりました。

715系0番台は1984年1月22日に営業を開始し、1984年2月のダイヤ改正で南福岡電車区に4両編成×12本の計48両が配属されました。長崎本線・佐世保線を中心に運用され、813系の増備により1998年までに全車廃車。東北地区向けの1000番台は60両が改造されています。

717系より2年早く登場し、6年ほど早く姿を消したことになります。両者を並べると、国鉄が「余った長距離用車両をどう近郊輸送に転用するか」を1980年代に繰り返し試していたことが見えてきます。

覚え方のコツは扉の数と窓です。715系は寝台特急の車体そのままなので窓の配置が独特で、717系0・100・200番台は近郊形として新造された整った車体。写真を見比べると、この差が一番わかりやすい判別点になります。

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413系は717系の交直流版|2026年3月14日に金沢乗り入れが復活

717系に乗ることはもうできませんが、同じ1986年に同じ発想で生まれた413系なら、いまも乗れます。急行形の走行機器を流用して近郊形の車体を新造した点は717系と同じで、違いは交直流である点。計31両が松任工場で改造されました。

JR西日本での運用は2021年3月12日に終わりましたが、車両は第三セクターに引き継がれました。あいの風とやま鉄道には2015年3月14日にB01〜B03・B07・B10の5編成15両が、えちごトキめき鉄道には2021年3月にB06編成とクハ455-701が譲渡されています。

注目は2026年3月14日のダイヤ改正です。413系3両編成による金沢乗り入れが復活し、富山9時42分発の金沢行きと、金沢11時05分発の富山行きに充当されています。413系3両編成の定員は366人で、混雑期の増車という役割です。増車日は年間120日程度が予定されています。

ただし2027年春のダイヤ改正からは521系3両編成への置き換えが予定されています。乗るなら早めに、というのが現実的な判断です。増車日は土休日を中心に設定されるため、平日に狙っても運用に入らない日があります。

えちごトキめき鉄道の「TOKIトレイン」は乗車券だけで乗れる

えちごトキめき鉄道に渡った413系・455系は、2026年3月14日から「TOKIトレイン」として運行を始めました。3両編成で、1号車はクハ455-701。塗装は交直流急行色から新北陸色に変更されています。

ありがたいのは、乗車券のみで乗れることです。じもパスやトキ鉄ツアーパスでも乗車でき、指定席を利用する場合に指定席券が別途必要になることがあります。観光列車というと追加料金が高い印象がありますが、この列車は運賃だけで国鉄形の車内を味わえます。

運行区間は妙高高原〜市振間で、土曜・休日を中心とした運行です。運行日と時刻はTOKIトレインの公式サイトで公開されているので、旅程を組む前に確認してください。

乗るときのコツは、区間を欲張らないこと。日本海沿いを走る区間は車窓が開けるので、直江津側から乗って景色の良い区間だけ往復する組み立てでも満足度が高くなります。国鉄形の座席で日本海を眺める時間は、717系が走っていた頃の空気に一番近い体験です。

食事つきで乗るなら観光列車「一万三千尺物語」

あいの風とやま鉄道の観光列車「一万三千尺物語」も、種車は413系です。AM01編成(クモハ413-1+モハ412-1+クハ412-1)の3両を改造した列車で、2019年4月に運行を始めました。土日を中心に走っています。

列車名は、標高3000m級の立山連峰と深さ約1000mの富山湾の高低差4000m(=1万3000尺)に由来します。車内では富山の食材を使った料理が提供され、1号「富山湾鮨コース」と2号「越中懐石コース」の2種類から選ぶ形です。

2025年末から車両検査で運休していましたが、2026年3月14日に運行を再開しました。予約は公式サイトのWeb予約または電話で、旅行代金やコースの詳細は一万三千尺物語の公式サイトに掲載されています。

選び方のコツは、目的をはっきりさせることです。国鉄形の走行音や車内の雰囲気を味わいたいならTOKIトレイン、食事と車窓をまとめて楽しみたいなら一万三千尺物語、通常の列車として日常の中の国鉄形に乗りたいなら金沢乗り入れの413系。同じ413系でも体験の中身が違います。

🚃
音と雰囲気を味わう

TOKIトレイン(乗車券のみ・土休日中心)

🍣
食事と車窓を楽しむ

一万三千尺物語(要予約・土日中心)

🎫
日常の1本として乗る

413系の金沢乗り入れ(2027年春まで)

なお、九州で国鉄形の交流電車を追いかけている方には713系という選択肢もありました。717系の車体と同じ設計基準で造られた形式ですが、2026年3月14日のダイヤ改正で定期運用から離脱しています。完全引退ではなく、改正後もLk-4編成が817系の代走に使われた記録があり、狙って乗るのは難しい状況です。

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まとめ|717系は「機器を使い切る」という国鉄の答えだった

🚃 この記事の結論

717系は急行形の機器を再利用して1986年に登場した交流専用の近郊形電車で、全46両が2014年までに姿を消しました。いま実物に触れたいなら、兄弟形式の413系に乗るのが唯一の方法です。

✅ 要点チェック
  • 正体:急行形の足回り+新造の近郊形車体
  • 両数:0・100番台30両、200番台14両、900番台2両
  • 仙台:2007年11月10日に定期運用終了
  • 九州:2014年9月18日までに全車廃車
  • 代わり:413系なら土休日中心にいまも乗れる

717系という形式を追いかけると、国鉄末期の考え方がそのまま見えてきます。使える機器は最後まで使う、足りないのは車体だけなら車体だけ作る。その割り切りが、1986年生まれの車体に1960年代のモーターという組み合わせを生み、九州では28年近い活躍につながりました。最初の一歩としておすすめしたいのは、あいの風とやま鉄道かえちごトキめき鉄道の運行日カレンダーを開いて、413系が動く日を1日押さえてみることです。同じ思想で生まれた車両に乗れば、写真でしか見られない717系の乗り味も想像しやすくなります。

※運行日・料金・営業時間は変更されることがあります。おでかけ前に各社・各施設の公式サイトで最新情報をご確認ください。

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この記事を書いた人

新幹線の窓側席と駅弁をこよなく愛する鉄道ファン。乗り換え案内や座席選びのコツ、お得なきっぷ情報など、鉄道旅をもっと快適にするための実用的な情報を中心に発信しています。交通手段の比較や空港アクセスガイドも得意分野です。

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