「リニアモーターカーって、結局どのくらい速いの?」と検索してこのページにたどり着いた方、まさに知りたい数字を先にお伝えします。世界最高記録は時速603km、実際の営業運転で出す予定の速度は時速500kmです。この103kmの差にはちゃんと理由があります。しかも意外なことに、リニアは時速150kmまではゴムタイヤで地面を走っていて、そこから初めて10cm浮き上がります。さらにもっと意外なのが、都営大江戸線も「リニアモーターカー」の仲間だという事実。リニアと名がつく乗り物は日本に何種類もあって、速度は時速70km台から時速603kmまでバラバラなんです。この記事では、JR東海の公式データをもとに、リニアの速度にまつわる数字を全部並べて解説します。新幹線との比較、世界のリニアとの比較、そして「その速度を実際に見に行く方法」まで、読み終わるころには友達に語れるレベルになっているはずです。
✅ この記事でわかること
✓ リニアの最高速度603km/hと営業速度500km/hの違いと理由
✓ 新幹線320km/hとどれだけ差があるのかを体感で比較
✓ 上海・中国・フランスなど世界の高速鉄道との速度ランキング
✓ 時速500kmの走行を実際に見る・乗る方法と料金
リニアモーターカーの速度は最高603km/h!まず押さえたい4つの数字

リニアの速度の話は、数字がいくつも出てきて混乱しがちです。「603km」「500km」「150km」——どれが何を指すのか、ここで整理しておきます。
世界記録は時速603km|2015年4月21日に山梨で生まれた数字
リニアモーターカーの最高速度は時速603kmです。2015年4月21日、山梨リニア実験線でJR東海の「L0(エル・ゼロ)系」が有人走行で記録しました。これは鉄道車両としての世界最高速度で、ギネス世界記録にも認定されています。
それまでの記録は2003年12月2日に同じ山梨リニア実験線で出た時速581km。12年かけて22km/h更新した形です。世界の鉄道史上、有人走行で時速600kmの壁を突破したのはこれが初めてでした。この記録は2026年7月現在も破られていません。
ポイントは「有人走行」という条件です。人が乗った状態、つまり実際の乗客輸送に近い条件で出した速度なので、無人の試験車が出した数字とは重みが違います。記録が出た区間は山梨リニア実験線のうち高速走行に使える直線区間で、603km/hを維持できたのはごく短い時間でした。
603km/hという速度は、音速(時速約1,235km)のちょうど半分弱にあたります。地上を走る乗り物で音速の半分に届いているのは、世界でもリニアだけです。
営業運転は時速500km|記録より103km遅く設定されている理由
実際にお客さんを乗せて走るときの速度は時速500kmです。JR東海の公式サイトでも、リニア中央新幹線は「最高速度500kmで走行する超電導リニア」と明記されています。
なぜ603km出せるのに500kmで走るのか。理由はシンプルで、鉄道の営業速度は必ず「出せる速度」より低く設定するからです。余裕を持たせておかないと、天候や設備の状態が少し変わっただけでダイヤが崩れますし、車両やガイドウェイの消耗も激しくなります。速度が上がるほど空気抵抗は速度の2乗で増えるため、消費電力や騒音の面でも500km/hあたりが実用的なラインになります。
この「試験最高速度>営業最高速度」の構図は新幹線でも同じです。東北新幹線のE5系は試験で時速320km以上を出していますが、営業では320kmで頭打ち。リニアの500km/hも、同じ考え方で決められた数字だと思ってください。
時速150kmまでは、実はゴムタイヤで地面を走っている
意外と知られていませんが、リニアは時速150kmを超えるまで浮きません。それまでは車両下部のゴムタイヤで、飛行機の離陸のように地面を転がって加速します。
理由は浮上のしくみにあります。JR東海の解説によると、車両に載せた超電導磁石がガイドウェイ側の「浮上・案内コイル」を横切る速度が時速150km以上になって初めて、車両を浮かせるだけの力が生まれる仕組みです。逆に言えば、止まっているリニアは浮いていません。駅に停まっているリニアは、タイヤで地面に接地した状態です。
浮上を始めると、車体はガイドウェイから10cm浮きます。この10cmという数字がリニアの速さの正体で、レールと車輪の摩擦がゼロになるため、500km/hという領域まで加速できます。逆に減速して時速150kmを下回ると、またタイヤを出して着地します。走行中の「ゴトン」という感触の正体は、この切り替えの瞬間です。
すれ違いの相対速度は時速1,026km|これがリニアで一番速い数字
リニアに関する数字で最も大きいのが、すれ違い時の相対速度・時速1,026kmです。2004年11月に山梨リニア実験線で記録されました。
これは上下線の車両が高速ですれ違ったときの、互いから見た速度です。時速500km台の車両同士が正面から接近するので、単純合計でこの数字になります。すれ違う瞬間は約0.1秒。窓の外は一瞬白い影が横切るだけで、何が通ったか目では追えません。
ちなみに山梨リニア実験線の走行距離は、1997年からの累積で329万km。地球約82周分です。1日の走行距離記録は2015年4月の4,064kmで、これは東京〜札幌をおよそ2往復半する距離を1日で走った計算になります。リニアの500km/hは、こうした積み重ねの上に置かれた数字だということです。
リニアの速度をより深く理解したいなら、新幹線が60年かけて速度を上げてきた流れも押さえておくと面白いです。

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新幹線の320km/hとどれくらい違う?体感でわかる速度差
「500km/hって言われてもピンとこない」という方のために、いま乗れる新幹線と並べて比べてみます。
国内最速の新幹線は「はやぶさ」の320km/h
2026年7月現在、日本の営業列車で最速なのは東北新幹線のE5系・H5系「はやぶさ」とE6系「こまち」で、最高速度は時速320kmです。宇都宮〜盛岡間でこの速度が出せます。
リニアの500km/hとの差は180km/h。数字だけ見ると「1.5倍ちょっとか」と思うかもしれませんが、180km/hというのは在来線特急が最高速度で走る速さそのものです。つまり「はやぶさの上に特急かいじを1本まるごと積み増した速さ」がリニアだと考えると、差の大きさが実感しやすくなります。
ちなみに2026年3月のダイヤ改正で山形新幹線「つばさ」はE8系に統一され、こちらは時速300km対応。国内新幹線の最高速度帯は300〜320km/hに収れんしつつあります。
新幹線側の速度事情をもっと細かく知りたい方はこちらもどうぞ。

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東海道新幹線は285km/h|リニアとの差は215km/h
リニア中央新幹線と同じ区間を走る東海道新幹線は、最高速度時速285kmです(山陽新幹線区間に入ると時速300km)。リニアの500km/hとの差は215km/hで、率にすると約1.75倍になります。
東海道新幹線が285km/hに抑えられているのは、1964年開業という古い路線ゆえにカーブの半径が小さいためです。最小曲線半径2,500mという規格は、当時の想定速度(時速210km)に合わせて作られたもの。あとから車両の性能を上げても、線路の形がそれ以上のスピードを許してくれません。
リニア中央新幹線が新たに線路を引くのは、この「線形の限界」を突破するためでもあります。リニアの最小曲線半径は8,000m。ほぼ直線に近いルートを、南アルプスをトンネルで貫いて進む設計です。
時速500kmは1秒で139m進む|東京タワーを2.4秒で追い抜く速さ
時速を秒速に直すと、速さの実感がぐっと近づきます。時速500kmは秒速約139m。時速320kmは秒速約89m、時速285kmは秒速約79mです。
秒速139mというのは、東京タワー(高さ333m)を横に倒したとして、その全長を約2.4秒で走り抜ける速度です。16両編成の新幹線(全長約400m)なら約2.9秒で通過します。ホームに立っていたら「来た」と思った瞬間にはもう視界から消えている計算になります。
もうひとつ実感しやすいのが「1分でどこまで行くか」。時速500kmなら1分で約8.3km進みます。山手線の内側(東西約6km)を1分かからず突っ切る速さです。時速320kmなら1分で約5.3kmなので、この差が積み重なって所要時間の大差になります。
| 列車 | 最高速度 | 秒速に換算 | 1分で進む距離 |
|---|---|---|---|
| 超電導リニア(営業予定) | 500km/h | 約139m | 約8.3km |
| 東北新幹線 はやぶさ | 320km/h | 約89m | 約5.3km |
| 東海道新幹線 のぞみ | 285km/h | 約79m | 約4.8km |
| リニア世界記録(2015年) | 603km/h | 約168m | 約10.1km |
※秒速・1分あたりの距離は最高速度から換算した数値(ガタンゴトン研究所調べ)
本当の差が出るのは「表定速度」|品川〜名古屋は平均427km/h
最高速度よりも実際の速さを表すのが「表定速度」、つまり停車時間も含めた平均速度です。ここでリニアと新幹線の差はさらに開きます。
リニア中央新幹線は品川〜名古屋の約285kmを最速40分で結ぶ計画です。距離を時間で割ると、表定速度は時速約427km。最高速度500km/hに対して85%という高い数字です。
対する東海道新幹線「のぞみ」は東京〜新大阪の約515kmを最速2時間21分、表定速度は時速約219km。最高速度285km/hに対して77%程度です。リニアは加速力が高く、途中駅の通過が多い設計なので、最高速度に近い速度を長く維持できます。「最高速度は1.75倍だけど、実際の移動時間は3倍近く短くなる」というのはこの表定速度の差から来ています。
なぜ500kmも出せる?10cm浮上とマイナス269℃のしくみ

ここからは速さの理由を分解していきます。難しい理屈は抜きにして、押さえるべきは3つだけです。
10cm浮いているから、そもそも摩擦がない
リニアが速い最大の理由はガイドウェイから10cm浮いて走っているからです。車輪とレールが接していないので、転がり摩擦がゼロになります。
従来の鉄道では、速度を上げるほど車輪とレールの間で滑りが起きやすくなり、粘着力(車輪が空転せずに力を伝えられる限界)が落ちます。時速400kmを超えるあたりから、車輪式は「回せるけど進まない」領域に入ってしまう。フランスのTGVが2007年に記録した時速574.8kmは、車輪を大径化しレールに莫大な負荷をかけた特別仕様での数字で、日常的に出せる速度ではありませんでした。
浮上式ならこの制約がありません。残る抵抗は空気抵抗と磁気抵抗だけになり、そのぶん速度域を一段引き上げられます。10cmという浮上高も重要で、地震で線路が多少ずれてもすぐには接触しない余裕として設計されています。
マイナス269℃まで冷やされた超電導磁石が主役
浮上させているのは、車両に載った超電導磁石です。特別な金属をマイナス269℃まで冷やすと電気抵抗がゼロになる「超電導」という現象を利用しています。
電気抵抗がゼロなので、一度電流を流せば減衰せずに流れ続け、強力な磁力を保ち続けられます。冷却には液体窒素と液体ヘリウムを使用。マイナス269℃は絶対零度(マイナス273.15℃)まであと4℃という極低温で、この技術がリニアの心臓部です。
車両側の超電導磁石と、ガイドウェイ側の「浮上・案内コイル」が引き合う力・しりぞける力を使って、車体を10cm浮かせつつ左右のブレも自動的に打ち消します。運転士がハンドルで真ん中に保っているわけではなく、物理法則が勝手に中央へ戻してくれる構造です。
推進コイルのN極・S極を切り替えて前へ引っぱる
前に進む力は、ガイドウェイ側の推進コイルが生み出します。コイルに流す電流を制御してN極とS極を切り替え、車両の超電導磁石を「前から引っぱり、後ろから押す」動作を連続させる仕組みです。
ここが従来の鉄道と決定的に違う点で、リニアの車両にはモーターがありません。動力は地上側にあり、車両はいわば磁力で引っぱられる箱です。地上側で電流の周波数を上げれば速度が上がり、下げれば減速する。この方式だと車両を軽くできるうえ、地上設備で速度を直接コントロールできるので、そもそも速度超過が起きにくい構造になっています。
ブレーキも同じ原理で、推進コイルに逆向きの力を発生させて減速します。停止直前の低速域では、油圧ディスクブレーキとタイヤの併用に切り替わります。
時速150kmを境にタイヤと磁力がバトンタッチする
発進から停止までの流れを時系列で追うと、リニアの速度制御の全体像が見えてきます。
ゴムタイヤで地面を走行して加速する
タイヤを格納し、10cm浮上して走行に切り替わる
摩擦ゼロの状態で巡航し、減速時は再びタイヤで着地
この150km/hという境目は、実は新幹線の巡航速度の半分にも満たない数字です。つまりリニアは「新幹線が本気を出す前の速度域」ではまだ地面を這っていて、そこから一気に3倍以上まで加速していく乗り物だということになります。加速の感覚は飛行機の離陸に近いと表現されることが多く、体験乗車でも浮上の瞬間に「ふわっ」とした感触があると言われています。
品川〜名古屋40分は本当?所要時間から見た速度のインパクト
速度の話は、最終的に「で、何分で着くの?」に落とし込むと一番わかりやすくなります。
品川〜名古屋の約285kmを最速40分で結ぶ計画
リニア中央新幹線は品川〜名古屋の約285kmを最速40分で結ぶ計画です。現在の東海道新幹線「のぞみ」だと東京〜名古屋は最速1時間33分前後なので、およそ50分の短縮になります。
40分というのは、都心から郊外へ通勤する時間とほぼ同じです。品川から名古屋まで、山手線で品川〜新宿を往復する程度の時間で着いてしまう。この「距離感の破壊」がリニアの本質で、単なる時短ではなく通勤圏・商圏の概念そのものが変わると言われる理由です。
途中駅は神奈川県相模原市、山梨県甲府市、長野県飯田市、岐阜県中津川市に設けられる計画で、これらの駅に停まる列車は40分より長くかかります。40分は品川〜名古屋を直行するタイプの数字です。
品川〜大阪は67分|のぞみの2時間30分から半分以下に
大阪まで延伸した場合、品川〜大阪は最速67分という計画です。JR東海の公式サイトでも「東京から大阪まで、東海道新幹線のぞみで約2時間30分かかっているけれど、リニア中央新幹線が開通すれば約1時間で着ける」と説明されています。
67分というのは、東京から乗って新幹線なら静岡にも着いていない時間で大阪に降り立てるということです。羽田〜伊丹の飛行機が飛行時間約1時間5分(これに搭乗手続きと空港アクセスが加わる)なので、ドアtoドアでは飛行機を明確に上回ります。
ただし大阪延伸は名古屋開業のさらに後の話です。名古屋までの区間が完成してから工事に着手する流れになっており、現時点で明確な開業年は示されていません。
2027年開業はすでに断念|新しい見通しは「2034年以降」
ここは誤解している方がとても多いポイントです。リニア中央新幹線の2027年開業は、すでに正式に断念されています。
JR東海は2024年3月29日、品川〜名古屋間の2027年開業を断念すると公表しました。新たな見通しは「2034年以降」。工事実施計画が認可された2014年からおよそ10年間掲げられてきた目標が、7年以上後ろにずれた形です。
「2034年以降」という表現も含みがあって、これは「最も早くて2034年」という意味です。南アルプストンネルの掘削に一般的に約10年かかるという工期から逆算した数字なので、条件が整わなければさらに後ろにずれます。2026年時点でリニアの開業時期を語るときは、「2030年代後半」くらいに構えておくのが実態に近いと言えます。
「2027年にリニアが開業する」という情報は2024年3月時点で撤回されています。古い記事やパンフレットには2027年と書かれたままのものが残っているので、開業時期は必ずJR東海の公式発表で確認してください。
止まっていたのは静岡工区|大井川の水問題が焦点だった
遅れの最大の原因は、静岡県内の工区が着工できなかったことです。南アルプストンネルの静岡区間(約8.9km)を掘ると、大井川の流量が減るのではないかという懸念が静岡県から示され、長く協議が続きました。
トンネル工事は「一番時間がかかる区間」が全体の完成時期を決めます。南アルプストンネルはリニア全線でも最難関で、ここが動かない限り全体が動かない構造でした。ルートを変えて回避する案も検討されましたが、時速500kmで走るには曲線半径8,000mというほぼ直線のルートが必要で、大きく迂回すること自体が難しいという事情もあります。
速度性能を追求した結果としてルートの自由度が下がり、それが工期に跳ね返る——リニアの500km/hという数字は、こうしたトレードオフの上に成り立っています。工事の進捗はJR東海の公式サイトで随時公表されているので、最新状況はそちらで確認するのが確実です。リニア中央新幹線公式サイト(JR東海)に工事の進み具合や技術解説がまとまっています。
世界のリニアと比べるとどう?速度ランキングで見る立ち位置
リニアは日本だけの技術ではありません。世界にどんなライバルがいるのか、速度で並べてみます。
実際に営業運転している世界最速は上海トランスラピッドの430km/h
「試験ではなく実際にお客さんを乗せて走っている」リニアで最速なのが、中国の上海トランスラピッドです。浦東空港駅〜竜陽路駅の29.863kmを7分20秒で結び、営業最高速度は時速430kmでした。
2004年1月1日に開業した、現存する最古の営業磁気浮上鉄道です。ドイツで開発されたトランスラピッド方式を採用しており、常電導磁石で約1cm浮上して走ります。JR東海の超電導方式(10cm浮上)とは別系統の技術です。
ただし現在は事情が変わっています。2020年5月以降、利用者の減少を受けて全時間帯で最高速度が時速300kmに引き下げられました。430km/hで走っていたのは過去の話で、いま乗っても新幹線と大差ない速度になっている、というのが実情です。
中国CRRCの高速磁浮は設計速度600km/h
2021年7月、中国中車(CRRC)が青島の工場で最高設計速度600km/hの高速磁浮車両を公開しました。JR東海のL0系が記録した603km/hに肉薄する数字として、当時大きく報じられています。
ただし「設計速度600km/h」と「有人走行で603km/h達成」は意味が違います。前者はカタログ上の目標値、後者は実際に人を乗せて出した実測値です。CRRCの車両が営業路線で600km/hを出したという報告は、2026年7月時点では確認されていません。
また2024年には、中国が低真空チューブ内の試験で「T-Flight」が時速623kmを記録したと報じられました。ただしこれはトンネル内の空気を抜いて空気抵抗を減らした環境での数字で、大気中を走るリニアの603km/hとは条件がまったく異なります。比較するときはこの前提の違いに注意してください。
車輪式の世界記録はTGVの574.8km/h|リニアとの差は28km
「浮かない鉄道」の世界記録も見ておきましょう。2007年4月、フランスのTGVが時速574.8kmを記録し、これが車輪式鉄道の世界最高速度として現在も破られていません。
リニアの603km/hとの差はわずか28km/h。「浮かなくてもここまで出せるのか」と思いますよね。ただしこの記録は、編成を短縮し車輪を大径化して架線電圧も上げた完全な特別仕様で、線路にも極めて大きな負荷がかかりました。日常的な営業運転で再現できる速度ではありません。
実際、TGVの営業最高速度は時速320kmです。試験記録と営業速度の差が255km/hもある。この差の大きさが、車輪式が抱える限界をよく表しています。リニアは603km/hに対して営業500km/hなので、差は103km/h。試験記録に対する営業速度の比率で見ると、リニアのほうがはるかに「実力を使い切れる」乗り物だとわかります。
日本で唯一営業運転している浮上式リニアは時速100kmのリニモ
ここで日本に目を戻します。日本で唯一、営業運転している磁気浮上式鉄道は愛知高速交通東部丘陵線「リニモ」で、営業最高速度は時速100kmです。
2005年の愛知万博(愛・地球博)のアクセス路線として開業しました。常温の電磁石で約1cm浮上するHSST方式を採用しており、超電導は使っていません。無人運転の路線としては国内唯一かつ最高となる時速約100kmで運行しています。
「リニア=時速500km」というイメージで乗ると、リニモの100km/hは拍子抜けするかもしれません。ただリニモの狙いは速さではなく、浮上走行による静かさと、急勾配・急カーブに強い走行性能です。丘陵地を上り下りするルートに合わせて選ばれた技術で、速度は目的ではありませんでした。
| システム | 速度 | 状態 |
|---|---|---|
| 超電導リニア L0系(日本) | 603km/h(世界記録) | 試験走行 |
| CRRC 高速磁浮(中国) | 600km/h | 設計速度 |
| TGV(フランス・車輪式) | 574.8km/h | 2007年の試験記録 |
| リニア中央新幹線(日本) | 500km/h | 営業予定 |
| 上海トランスラピッド(中国) | 430km/h→現在300km/h | 営業中 |
| はやぶさ(東北新幹線) | 320km/h | 営業中 |
| リニモ(愛知) | 約100km/h | 営業中 |
※各社公表値をもとに作成(ガタンゴトン研究所調べ)
大江戸線もリニアだって知ってました?速いリニアと遅いリニアの正体
ここが今日いちばん面白い話かもしれません。実は多くの人が、意識せずにリニアモーターカーへ毎日乗っています。
都営大江戸線とOsaka Metro長堀鶴見緑地線は「鉄輪式リニア」
都営地下鉄大江戸線とOsaka Metro長堀鶴見緑地線は、どちらもリニアモーターで走る地下鉄です。業界では「リニアメトロ」と呼ばれています。
日本初のリニア地下鉄は、1990年の国際花と緑の博覧会(花の万博)のアクセス手段として開業したOsaka Metro長堀鶴見緑地線。2番目が都営大江戸線です。どちらも車輪でレールの上を走りながら、推進力だけをリニアモーターから得ています。これを「鉄輪式リニア」と呼びます。
浮いていないので当然、超電導リニアのような速度は出ません。ただし「リニアモーターカー」という言葉の定義上は、まぎれもなくリニアの仲間です。「リニアに乗ったことがない」と思っている東京の方も、大江戸線に乗った時点で経験済みだった、というわけです。
大江戸線については延伸計画も動いているので、あわせて知っておくと便利です。

「大江戸線って、いつになったら大泉のほうまで伸びるの?」——練馬区の北西部に住んでいる人なら、一度は気になったことがあるんじゃないでしょうか。結論から言うと、都…
浮かないのに採用される理由はトンネルの小ささにある
「速くならないのに、なぜわざわざリニアモーターにするの?」と思いますよね。答えは建設費です。
通常の地下鉄は車両の床下に大きな回転モーターと歯車を積むため、車体を高くする必要があります。リニアモーターなら床下の装置が薄い板状で済むので、車両の高さを大きく下げられる。その結果、トンネルの断面積を小さくでき、掘削量と建設費を減らせます。
大江戸線が地下深くを走りながらも建設できたのは、この「小型地下鉄」の発想があったからです。速度ではなく、コストと施工性のためにリニアを選んだ。同じリニアモーターという技術が、片や時速500kmを目指し、片や建設費削減のために使われているのが面白いところです。
リニモは1cm浮上・時速100km|浮くけど速くない中間タイプ
リニモは前述のとおり浮上式ですが、速度は時速100km。「浮く=速い」ではないことを示す好例です。
リニモが使うHSST方式は常温の電磁石で車体を吸い上げる仕組みで、常に電力を使って1cmの隙間を保ちます。超電導方式のように高速で走らないと浮かないという制約がないため、停車中も浮いた状態を維持できます。逆に言えば、時速500kmのような超高速域には向いていません。
つまり浮上式には「常に浮いていられるが速度は控えめ」なタイプと、「一定速度以上でないと浮かないが超高速まで伸びる」タイプがある。JR東海の超電導リニアは後者で、時速150km以上でしか浮けない代わりに500km/hまで到達できます。
よくある勘違い「リニアは全部浮いている」の落とし穴
「リニア=浮上する乗り物」と思い込んでいると、話が噛み合わなくなる場面があります。実際には浮くリニアと浮かないリニアがあるのが正解です。
整理すると、浮上するのはJR東海の超電導リニア(10cm浮上)と愛知のリニモ(約1cm浮上)、上海トランスラピッド(約1cm浮上)。浮上しないのが都営大江戸線・Osaka Metro長堀鶴見緑地線などのリニアメトロです。前者は「磁気浮上式鉄道(マグレブ)」、後者は「鉄輪式リニア」と呼び分けられます。
ニュースで「リニア」と言えばほぼ超電導リニアのことを指しますが、鉄道の技術文書では両方が「リニア」です。この違いを知っておくと、リニア関連の記事を読むときに数字の食い違いに惑わされなくなります。
時速500kmを自分の目で見る・体で感じる2つの方法
開業を待たなくても、リニアの速度はいま体験できます。方法は「見る」と「乗る」の2つです。
山梨県立リニア見学センターなら420円で時速500kmが見られる
最も手軽なのが山梨県立リニア見学センター「どきどきリニア館」です。山梨リニア実験線に隣接していて、走行試験がある日は目の前を時速500kmで駆け抜けるリニアを見られます。
入館料は一般・大学生420円、高校生320円、小中学生200円。開館時間は9:00〜17:00(最終入館16:30)です。土曜日に来館する小中高・特別支援学校の在学者と、障がい者およびその介助者は無料になります。なお2027年4月1日からは一般・大学生480円、高校生360円、小中学生230円に改定される予定です。
館内には実際に走ったL0系や、超電導のしくみを体験できる展示があり、走行試験がない日でも楽しめる構成になっています。時速500kmで通過する瞬間の音と風圧は、動画では絶対にわからない部分です。
| 所在地 | 山梨県都留市小形山2381 |
| 開館時間 | 9:00〜17:00(最終入館16:30) |
| 入館料 | 一般・大学生420円/高校生320円/小中学生200円 |
| 公式サイト | 山梨県立リニア見学センター |
走行試験日は毎週金曜の夕方に翌週分が発表される
ここが最重要のコツです。リニアの走行試験は毎日やっているわけではありません。試験がない日に行くと、止まっている展示車両を見るだけになります。
走行試験の予定は、毎週金曜日の夕方に翌週分が見学センター公式サイトのカレンダーに掲載されます。つまり「来月の第3土曜に行こう」という計画段階では、走るかどうかまだ誰にもわかりません。行く週の金曜夕方以降にカレンダーを確認するのが唯一の方法です。
また、走行の具体的な時刻までは公表されません。試験の都合で予告なく変更・中止されることもあります。確実に見たいなら、走行試験日の午前中から入館して滞在時間を長めに取るのが現実的です。開館直後の9時台は比較的空いていて、展望室の窓際を確保しやすくなります。
🎯 裏ワザ
走行試験日は平日に設定されることが多く、休日より平日のほうが「走っているリニアを見られる確率」は高くなります。有給を取ってでも平日に行く価値があるのは、この理由です。土日しか行けない場合は、金曜夕方のカレンダー更新を必ず確認してから予定を確定させてください。
抽選に当たれば時速500kmに実際に乗れる|1区画4,400円
見るだけでは物足りない方には、JR東海が実施する超電導リニア体験乗車があります。山梨実験センターで、時速500kmの「L0系改良型試験車」に実際に乗れるイベントです。
2026年は7月23日・24日・30日・31日に開催されました。参加費は1区画(2座席)4,400円、2区画(4座席)8,800円。乗車時間は約30分で、受付から解散まで概ね1時間の所要です。応募多数の場合は抽選となり、人気が高いイベントとして知られています。
次回開催については、JR東海の超電導リニア体験乗車 公式サイトで「詳細が決まり次第ご案内」とされています。募集期間は開催の2か月ほど前に始まるので、公式サイトを定期的にチェックしておくのが確実です。開催場所は山梨実験センター(山梨県都留市小形山271-2)で、見学センターとは別の施設なので間違えないよう注意してください。
やりがちな失敗|見学センターと実験センターを取り違える
実際によくあるのが、「山梨県立リニア見学センター」と「JR東海 山梨実験センター」を混同するミスです。名前が似ているうえ、住所もどちらも都留市小形山で紛らわしい。
整理すると、見学センターは山梨県が運営する展示施設で、いつでも420円で入れる場所。実験センターはJR東海の試験施設で、体験乗車イベントのときだけ一般が入れる場所です。体験乗車に当選した人が見学センターに行ってしまうと乗れませんし、逆に「リニアを見たい」だけの人が実験センターに行っても入れません。
もうひとつの失敗が、走行試験日を確認せずに遠方から出かけてしまうケース。カレンダーが翌週分しか出ない仕様なので、宿や交通を先に押さえるタイプの旅行だと空振りしやすくなります。走るリニアを見るのが主目的なら、日程を後から決められる形で計画するのがおすすめです。
リニアの速度まとめ|603km/hと500km/hの意味を押さえれば全部わかる
リニアモーターカーの速度は、覚えるべき数字を2つに絞ると一気にスッキリします。「試験で出した最高が603km/h、実際に営業で出すのが500km/h」——この2つさえ押さえておけば、ニュースで出てくるどの数字も位置づけがわかります。そして速さの理由は10cmの浮上とマイナス269℃の超電導磁石。時速150kmまではタイヤで走っているという事実は、話のネタとしても優秀です。
新幹線との比較で言えば、はやぶさの320km/hに対して180km/h上乗せ。ただし本当の差が出るのは表定速度で、品川〜名古屋を40分で走る計画は平均時速427kmという計算になります。移動時間で見ると、のぞみの半分以下です。一方で「リニア」と名のつく乗り物には時速100kmのリニモも、浮きもしない大江戸線もある。速度で語るときは、どのリニアの話なのかを区別するのがコツです。
次にやることは2つです。ひとつは、リニアが走る姿を見たいなら山梨県立リニア見学センターの公式カレンダーを開いて、直近の走行試験予定を確認すること。毎週金曜夕方に翌週分が出ます。もうひとつは、実際に時速500kmを体験したいならJR東海の体験乗車ページをブックマークして、次回募集の告知を待つこと。2026年7月開催分は1区画4,400円でした。開業は2034年以降になりましたが、その速度を体感する手段はすでに用意されています。
※料金・開催日程・開業時期は変更される場合があります。最新情報はJR東海 リニア中央新幹線公式サイトおよび山梨県立リニア見学センター公式サイトでご確認ください。

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